今回のコラムでは、今注目度が高まっている海外現地採用における「外国人採用」での、手法や注意点、そしてトレンドについて詳しく解説していきます。
海外での現地採用に役立つ実践的な採用手法をいくつか紹介しますので、是非参考にしていただければ幸いです。
<目次>
海外現地にいる外国人採用が増えている背景としてまず挙げられるのは、「ビジネスの国際化」です。多くの企業が世界でビジネスをするようになったことで、企業は日本国内だけでなく、海外の国々の市場においてもビジネスを展開することが、事業と会社を成長させるためには欠かせなくなったのです。
具体的には、ビジネスの国際化が進んだことにより、企業は商品を海外で販売するようになったり、あるいはその商品を現地の工場で生産したりするようになりました。
日本は少子高齢化がますます進んでおり、労働人口が以前に比べて減少しています。多くの業界や企業において人材確保は経営課題となっており、採用現場ではもはや売り手市場が常態化しています。
その中でも特にデータサイエンティストやエンジニアなど、専門的なスキルを持つ人材の需要が高まっている反面、その担い手は絶対的に不足しており、供給が十分になされていないのが実情です。
この課題を日本国内で解決するのではなく、海外で解決することができるのではないかという期待が近年高まっています。そして実際、多くの日本企業が海外採用で成功を収めることができています。
上記でも説明をしたような状況のもと、労働人口不足が加速している国内では、ハイスキル人材を採用することが年々難しくなっています。そのソリューションとして、海外現地採用を活用することができます。
国や地域によって、得意な専門分野が異なってくるので、自分達のニーズに合わせてオフィス展開をする国などをチョイスしていくことが非常に重要です。
エンジニアやデータサイエンティストなどのハイスキル人材は、当人たちがスキル獲得に多くの時間やお金を費やしてきています。そういった人材を雇うためには、スキルレベルや経験に応じた一定の給与など待遇条件を用意することが必要です。
特に日本やアメリカなどをはじめとする物価水準が高い国では、それに合わせた給与が求められます。一方で、全体的な物価水準がそこまで高くないフィリピンやベトナムといった国々であれば、その給与額などを抑えることができるので、結果として比較的ハイスキル人材の人件費を抑えることが可能と言えるのです。
ただし、近年ではハイスキル人材の給与水準は、国内と海外でほとんど差がなくなってきているのも事実です。
したがって海外現地の外国人採用のメリットは、どちらかといえば「人件費圧縮」の側面というよりも「専門性の高い人材の絶対数不足を解消できる」という方が実態に即しているようです。
現地の事情を深く知っている外国人を採用することで、国内の経営陣やスタッフだけでは予測や対処が難しいさまざまな課題を回避、あるいは解決しやすくなります。
異国の地でビジネスを展開する上では、現地事情、具体的にはトレンドや文化、また法律関係など気にするべき要素が多いです。
日本国内のメンバーだけで地道にリサーチを行ってそれらをカバーすることも不可能ではないものの、やはりその国や地域にいる現地外国人のほうが、それらを深く理解し、スピーディーに事業に反映してくれます。そのため、安定して海外拠点運営を成功させやすいと言えます。
日本国内での採用活動以上に、海外現地で課題となるのが会社の知名度不足です。
最近では多くの人が、会社の規模や知名度ではなく、仕事内容や職場の雰囲気などで仕事を選ぶようになりましたが、それでも会社の知名度は仕事選びをする上での大事なファクターといえるでしょう。
特に中小企業やBtoBサービスを提供する企業ですと、海外で名が知られているということはなかなかありません。何らかの対応策を講じる必要があります。
採用ミスマッチについても、日本国内と同等かそれ以上に課題となりがちです。
仕事の内容であったり、報酬や福利厚生の内容であったりなど、双方が納得のいかない状態やあやふやなまま雇用・労働契約を結んでしまうと、深刻なミスマッチにつながってしまいます。
特に海外となると、基本的な仕事の条件面の違いだけでなく、文化の違いなどもあります。求職者が求めるものにそもそも対応できない、あるいは企業側が求める仕事のしかたに納得してもらえないといったギャップが生まれてしまうリスクが国内よりも多くあります。
日本での新卒採用や中途採用においては、多くの企業がすでにメジャーな採用媒体をいくつか熟知していて、それらを定番的に使っています。また求職者も自然とそれら媒体を活用して仕事を探しています。
一方、海外での採用ではそもそも媒体ごとの大きさや専門性を調べるところから始まります。どの媒体に求人広告を出稿することで効率よく人材を確保できるのか、その国についての深い見識やノウハウの不足がハードルとして立ちはだかるでしょう。日本では聞き馴染みのない、独自の媒体が広く普及している国は多いです。それらを使いこなす難易度は高いといえます。
新しい環境に飛び込むとなった際には誰しもが、その文化や環境に馴染めるのか、自分にフィットするのかなど多くの不安を感じてしまいます。
特に海外の企業となると、現地に住む外国人労働者は、日本の文化に馴染めるのか、日本の企業が求める働き方はどんなものか、それを満たすことができるのかなど、様々な不安を感じることが多いでしょう。
企業によっては劣悪な環境で労働を強制させられたり、不当な低賃金で就業させられたりするケースがあり、時には国際ニュースで取り上げられることもあります。
外国人の求職者が仕事選びをする際には、労働環境や待遇面が満足のいくものなのかは、やはり最も気にするポイントとなっています。
日本人が外資系企業への応募を考える際に、「英語が得意でなくてはだめかな」と不安になる人は多いと思います。同じように、現地の外国人が日本企業への応募を検討する際には、日本語や英語の能力、あるいは現地の言葉が通じる環境があるのかなど、言葉の壁に不安を感じる人は多いようです。
現地のヘッドハンティング会社が提供するリクルーティングサービスを活用することの一番大きいメリットは、自社の人的リソースを使わずに採用活動を現地で行える点です。
社内準備にかかる工数が抑えられるため、採用活動スタートと同時にサービスを利用することで、スピーディに効果を期待することができます。
採用活動の一部を外部委託することになるので、採用ミスマッチのリスクは拭えません。企業と求職者同士のマッチング精度などにおいて、ヘッドハンティング会社は複数のクライアントを抱えているため、1社の採用活動に特化している社内の人事担当者に比べると、どうしてもミスマッチや入社後の早期離職などの懸念が残ります。
海外での採用活動に特化するためのバイリンガルスキルをもつ人事担当者を確保する方法は、継続的に現地採用を行いやすいことがメリットです。
現地事情に詳しいバイリンガルな人事担当者に採用活動を任せることで、現地求職者との関係構築や、入社後のフォローアップなども可能となります。日本語をあまり話せない現地外国人が安心して仕事をすることのできる環境を作ることができます。
この手法の前提となる「バイリンガル人材を確保すること」がとても難しい点が、最大の注意点です。
単に日本語と現地の言葉が話せるだけでは十分ではありません。採用担当としての実績や現地のビジネストレンド、求職者ニーズなどを熟知しているバイリンガル人材を確保することが大切です。
優れた人事担当者を確保するためには、それなりの報酬も用意する必要があるので、慎重に人事担当者の採用を行うべきだといえます。
日本国内のリソースでまず始めることのできる手法です。動画制作やサイト制作の費用のみで済むため、新たにヘッドハンティングサービスを利用したり、バイリンガル人事を採用したりするよりもコストを抑えて始めることができます。
そして何より、現地外国人が気にするポイントで述べたような不安点を、この手法で打破することが可能です。そのため、海外での採用活動をスムーズに、かつマッチング精度を高いものにできます。
現地の求職者にダイレクトに仕事内容や募集概要について伝えることができたり、企業ブランディングを実現しやすかったりする反面、きちんと作り込まなければ会社のブランドを棄損するリスクがあることも覚えておきましょう。
例えば現地の言葉への翻訳を誤っていたり、現地の法令やタブーを犯すことを行ってしまったりすることです。それらをインターネット上で公開すると、企業としての信頼性に傷をつけてしまい、採用活動に負の影響を及ぼしてしまう恐れがあります。そのため、制作物をアップロードする際には、翻訳チェックやリーガルチェックを実績ある制作会社に依頼するなどの対策を怠らないことが大切です。
国や地域によって強みとする業種業界が異なります。本章では以下の2つの国とそれぞれが強いとされている業界について解説します。
オンライン英会話サービスの拠点などで名前を聞くことの多いフィリピンは、教育系、特に英語系の職種に強い国だと言えます。フィリピンは共通語のタガログ語とともに英語が広く使われており、ネイティブ並みに英語を話せる人が多い国として注目が高まっています。
英語講師の給与基準を日本国内よりは抑えられる上、レベルの高い英語教育を提供できるという点で、近年さらに存在感を増しています。実際、DMM英会話など大手のオンライン英会話教室でも、フィリピン在住の講師が多く活躍しているようです。
ベトナムには著名な工科大学が多くあり、優れたエンジニアを多数輩出しています。特にハノイ工科大学はベトナム政府から数々の賞を受賞し、日本の大企業への就職者数も多く、IT人材の育成の場として注目されています。
ベトナムは親日国でもあり、日本企業で仕事をすることに意欲的ともいわれます。日本企業にとって、採用活動を行う実現性が比較的高いと考えられます。
近年は採用効率を高めるために、企業がさまざまな手法や対策を新しく取り入れています。
ここでは、海外採用において注目度が高まっている手法トレンドをご紹介致します。
広告代理店やマーケティング会社、デザインファームなどの第三者に依頼をして採用ブランディングを委託するのがかつてはメジャーな手段でした。しかし、これらには莫大な予算が必要なため、スタート判断に時間がかかります。また予算をそこまで割けない企業にとっては、優秀な人材を確保するということが難しいという現実がありました。
しかし、インターネットが発達し企業ホームページやSNSの活用が広がった現在、採用ブランディングを自社で、かつコストを抑えて行えるようになりました。海外での採用においてももちろん同じです。現地向けに自社の魅力をアピールしたり、職場の雰囲気などを発信したりして、採用活動をオンライン上でも展開できるようになりました。コストを抑えつつ、優れた人材を確保できるチャンスが広がったのです。
入社前に仕事内容や報酬体系、会社の雰囲気などを把握してもらうことは、入社後の採用ミスマッチや早期離職を防ぐ上で重要です。
具体的には、面接の前後などで採用動画や採用サイトなどを、求職者にしっかりと見てもらうことが有効です。動画コンテンツなどを通して求職者本人にあらかじめ自社理解を深めてもらうことは、お互いのミスマッチ回避につながるからです。
インターン生の採用は、日本国内でもトレンドとなっている採用手法のひとつです。具体的には、長期インターンとして社員並みの実務を長期経験してもらい、その経験や関係性を活かして大学卒業後の就職先に選んでもらうという制度です。
インターンとして在学中から経験やスキル取得の機会を提供しておくことで、新卒入社の時点から即戦力として活躍してもらえる可能性が高まります。
自社の会社概要やアピールしたい特徴などを、現地の求職者に刺さる形で動画コンテンツにまとめておきましょう。例えばワークライフバランスを重視する国民性の国であれば、有給休暇を取りやすい環境といったアピールが有効でしょう。
日本と海外では、その文化やトレンドによって刺さるポイントが異なります。しっかりとそのポイントをリサーチした上で、動画を制作していくことが大切です。
外国人向け採用動画は、ターゲットとなる国の現地求職者にとって分かりやすいものにする工夫をしましょう。具体的には、現地に住む外国人の母国語を用いた動画をつくるなどが挙げられます。
もちろん英語が堪能な人材も多くいますが、やはり自分たちの母国語で説明されている動画を見ることで、会社に親近感を感じやすくなります。また求職者にとっては、入社後の「言葉の壁」にまつわる不安がやわらぎます。
このような工夫や思いやりの積み重ねで、現地の求職者に自社を魅力的に感じてもらいましょう。
上記aとbを意識して制作した動画コンテンツは、現地でのメジャーな採用媒体であったり、自社で運営しているWebサイトやSNS上にアップロードしましょう。その際はただ単にアップロードするのではなく、マーケティング目線をもって運用することが重要です。
ここでの「マーケティング目線をもった運用」とは、自社サイトやSNS投稿を見てほしいターゲットとなるペルソナの設定と、それに合わせた投稿内容やデザイン、また投稿頻度などを意味します。これらを意識して、SNSで情報発信をすることで、より多くの人に投稿が見られるようになり、会社の知名度アップや採用ブランディング効果などを期待できます。
こちらの記事で、具体的な採用動画のYouTubeでのアップロード方法について解説をしています。
是非チェックしてください。
今回の記事では、海外現地での採用を成功させるコツや注意点についてご説明しました。
もちろん日本国内の採用活動において通用した方法や実績も役立ちます。しかし現地外国人の採用活動は、さまざまな工夫を伴った施策によって成功させることができます。
今回ご紹介した手法やポイントを意識して、ぜひ海外現地採用を加速させていきましょう。